介護業界における人手不足の現状、原因は?解決策をご紹介

コラム

2025.06.02

介護業界では少子高齢化の影響を大きく受けて、人手不足が深刻化しています。介護現場で人手不足になると、介護スタッフの負担増加やサービス品質の低下、そして介護施設入居者の生活にも影響を与えてしまいます。
この記事では、介護業界の人手不足の現状やその主な原因、解決策について解説します。

目次


介護業界における人手不足の現状
介護業界における人手不足の主な原因
人間関係に問題がある
仕事内容に対して待遇が悪い
拘束時間が長く精神的負担が大きい
ライフステージの変化
介護業界における人手不足の解決策
1.働きやすい環境を構築
2.介護ツールやロボットの活用など、ICT化の促進
3.社員の評価制度を整える
4.社員の教育支援や資格取得支援を行う
5.外国人人材の受け入れを進める

 

■介護業界における人手不足の現状

少子高齢化によりどの業界でも人手不足が問題となっています。とくに介護業界においては、高齢者のニーズも高まることからその問題は深刻な状況です。
厚生労働省が公表している介護職員の必要人員のデータによれば、2026年度では約240万人の介護職員が必要とされている一方で、約25万人が不足することが発表されています。2040年度にいたっては、介護職員の必要人数272万人に対して、約57万人の増員が必要になるとの推計データが出ています。
厚生労働省ではこれらの問題を踏まえ、人材不足を解消するために多様な働き方の導入や人材育成、外国人労働者の受け入れなどさまざまな対策に取り組んでいます。

参考:厚生労働省「介護人材確保に向けた取組」

■介護業界における人手不足の主な原因

介護業界における人手不足は、少子化や高齢化だけが原因ではありません。多くの介護施設が抱えている問題として、離職率の高いことや採用率が少ないことが人手不足を深刻化させる大きな原因となっています。

なぜ離職率が高まり、なり手が不足しているのか、その原因についてひとつずつみてみましょう。

人間関係に問題がある

介護業界でもっとも多い離職の原因は、人間関係の問題です。職場の人間関係の問題は、介護業界だけに限ったことではありません。しかし介護の現場はひとりで黙々と行う業務ではなく、スタッフがチームとなって仕事をこなすという特性が強いため、人間関係が悩みの種となり離職につながっているのかもしれません。

またスタッフ間の問題だけでなく、入居者との人間関係に問題を抱えているケースも考えられます。

仕事内容に対して待遇が悪い

給与などの待遇が仕事内容に対して見合っていないことも、離職理由となり人手不足の原因になっています。介護の仕事は体力も求められるうえに、介護に関する専門的な知識も必要です。しかしながら、給与や賞与が低いなどの理由から不満を待ち、退職を考える方もいます。

また昇給制度や資格手当がないことで、スキルや経験が適切に評価されないなども理由につながります。勤続年数を重ねて給与が上がったとしても、責任ある立場になりさらに業務量が増えることから、いずれにしても待遇が見合わずに退職を選ぶケースもあると考えられます。

拘束時間が長く精神的負担が大きい

介護現場は24時間対応が求められるため、夜勤が発生します。多くの施設では夜勤の場合、夕方16時から翌朝の10時のシフトが組まれるのが一般的です。うち2時間は休憩や仮眠の時間が設けられますが、およそ18時間拘束されることになり、体力的に負担を感じる方も少なくありません。

また介護の現場では、入居者が体調を崩したり転倒してしまったりするリスクも少なからず存在します。介護スタッフは入居者の命や安全を預かるという責任があるため、精神的な負担も大きいといえます。

ライフステージの変化

離職の理由として、人間関係の問題に次いで高い割合を占めているのが、ライフステージの変化です。結婚や妊娠、出産、育児など、女性に多い理由となっており、結婚のタイミングでの引っ越しや、子育てにより夜勤ができないなどの理由があるようです。

さらに職場によっては、産休や育休、介護休業を取れないことも理由の一つです。休業制度が整備されているとしても、人手不足によって取得しづらいケースや、突発的な休みや柔軟なシフト変更が難しいといった状況も考えられます。ライフステージの変化から仕事と家庭の両立が難しいと感じ、離職を選択する方もいます。

■介護業界における人手不足の解決策

介護業界ではさまざまな原因によって離職を招いていることがわかりました。人手不足を解決するために、長く働いてもらい採用率を高めるための解決策を紹介します。

1.働きやすい環境を構築

介護スタッフが働きやすい環境を構築することが、人手不足の解決につながる取り組みです。たとえば結婚・育児・病気・介護などライフステージの変化があった場合、必要な休暇がとれるような制度を整えておくことが一つ挙げられます。またその制度を利用できるように休暇を取得しやすい環境づくりや利用促進なども大切です。安心して必要な休暇を取得できるようになるため、離職しなければならないという状況を防げます。

また未経験者のスタッフが入社したときには、教育や業務をサポートできる体制を整えることも大切です。精神的不安を軽減して安心して仕事に取り組めるようになり、定着率も向上できるでしょう。

2.介護ツールやロボットの活用など、ICT化の促進

介護業界ではツールやロボットの活用など、ICT化が重要視されています。ICT化を促進することで、人がやらなくてもよい業務を見直し円滑に進められるようになるため、業務の効率化や生産性の向上が見込めます。

たとえばどこでも介護記録を付けられるようにスマートフォンなどのツールを導入する、スタッフの身体への負担を軽減するために介助をサポートするロボットを導入するなどの方法が挙げられます。結果的にスタッフの負担が軽減されるため、働きやすさにもつながるでしょう。

3.社員の評価制度を整える

社員の能力や働く姿勢などを、適正に評価できる制度を整えることも解決策につながります。評価制度がしっかりと定まっていなければ、いくら仕事を頑張っても評価されず、給与や賞与に反映されないといった不満につながります。評価する内容が、勤続年数や年功序列などが基準となっていると、若くても意欲的に働く人がしっかりと評価されず、離職の要因になることが考えられます。

評価制度を整えることで働くモチベーションにつながるため、離職を防ぎ人手不足の解消が期待できます。

4.社員の教育支援や資格取得支援を行う

介護スタッフのキャリア形成を支援できる取り組みも大切です。その一つが資格支援制度の構築です。介護の職は保有している資格によって業務の幅が異なり、それによって待遇アップにもつながります。福祉系の大学や専門学校を卒業していなくても、実務経験を積んでいれば目指せる資格もあります。資格取得のための費用を手当として支給するなど支援体制が構築できれば、キャリアアップを目指してモチベーション高く働き続ける方も増えるでしょう。

またキャリアを支援する職場であることを、求職者にアピールできる利点もあります。

5.外国人人材の受け入れを進める

介護現場の人材不足を解決するために、日本政府の施策の一つとして進めているのが、外国人人材の受け入れです。外国人の受け入れは若手の労働力を確保し、長期間の雇用が期待できる点が大きなメリットです。
外国人の雇用を促進するために、技能実習制度や特定技能、在留資格「介護」、特定活動(EPA)などの制度が導入されています。具体的には技能実習制度で5年間、その後は特定技能に移行してさらに5年の合計10年間の雇用を見込めます。そして10年のうちに介護福祉士の資格を取得できれば、在留資格「介護」が得られるため制限なく在留が認められます。
ただし、外国人人材を受け入れる場合は、事業所の体制をしっかりと整えることが大切です。文化的なギャップを受け入れて教育にあたることや、職場に馴染めるようにサポートするなど、定着できるように職場全体で協力することが必要です。

次週は、解決策の中でも取り組みやすい”ICT化”の解説と、役に立つ具体的なツールをご紹介します!

 

ココヘルパ製品詳細へ