目次
不適切ケアとはなにか
軽視、尊厳を傷つける行為のグレーゾーン
軽視からの放置、強要、拘束
管理者への指導、教育の難しさ
予防と対策
■不適切ケアとは何か?

一般的に不適切ケアとは、利用者に不快や苦痛を与える可能性があり、虐待に繋がりかねない行為の事を指します。
例えば虐待までとは言えない、拘束、強要、放置といったことが当てはまります。不適切ケアは虐待の芽と言われており、見逃していると大きな事故につながりかねないため、注意が必要です。虐待が発生してしまえば利用者様の心身への危害だけでなく、運営法人の存続も危ぶまれる事態を引き起こします。
職員は頭の中ではわかっていても、無意識のうちにやってしまっているケースがあるというのが、この不適切ケアの厄介なところです。
■軽視、尊厳を傷つける行為のグレーゾーン
不適切ケアの中でも、特に無意識のうちにやってしまっている事が多いのが、利用者への軽視、尊厳を傷つける行為とも言えます。
経営者の中には、スタッフが利用者に対して、親しげに友達感覚で話しかけているのを見て、コミュニケーションが取れている良い施設という感覚を持ってしまう方もいますが、ある意味危険な兆候とも言えます。

介護施設・事業所にとって、入居者・利用者はお客様であり、家族、友人ではありませんので、接遇面については細心の注意を払わなければなりません。
スタッフが入居者様に対して⚫︎⚫︎ちゃんなどと呼んで友達感覚で会話をしていることで、管理者が率先して、その事を利用者様とスタッフのコミュニケーションがよく取れているかのような勘違いをすることが、不適切ケアや虐待の入り口になっている危険性があります。
■軽視からの放置、強要、拘束
介護職は利用者様と仲良くなる事が仕事ではなく、利用者様が安全、安心で快適な生活をサポートする事が仕事です。もちろん良い関係性を築いてより良いケアを行える環境を作る事もいいのですが、スタッフは友達ではないのです。
軽視が始まると、例えばナースコールが鳴っても「〇〇さんは大したことがなくても呼ぶから大丈夫」とか「すぐ行きまーす」と言って、後回しにしたりするといったことが常態化する危険性があります。次に無理に食事を食べさせようとしたり、オムツの中で排泄させるといった強要から、自分たちの都合を優先させるための不必要な拘束などにつながっていく危険性があります。

実はこの根本にある思考は、利用者様の意に沿うことよりも、自分たちが都合の良いケアを優先する思考に変わってしまうからです。故に軽視が不適切ケアや虐待の入り口となると言えます。
またこのような思考のスタッフが増えることで、他のスタッフもこの思考に染められて、悲しいことに良いスタッフが辞めていくという悪循環を生むことになります。
■管理者への指導、教育の難しさ
施設長や介護の管理者の多くは現場出身の人材が多いです。自分たちが現場で苦労した事、困った事の経験がある故に、現場スタッフからの申し立てや苦情に対して、スタッフ側の心情に立ってしまう事も多々あります。

慢性的なスタッフ不足で辞められてしまう恐怖から、不適切ケアを見逃す、放置してしまうケースがある事は残念ながら否めません。法定研修などで接遇や虐待について行っていても、人間関係などから生まれる現場の空気感に負けてしまう事は多々あります。
■予防と対策
この問題に明確な解決策はないかもしれません。しかしながら法人、経営者側の意識の高さも重要になってきます。経営者サイドが施設や事業所の問題といって、介入する事を極度に避けることはよくありません。頻度には気をつけないといけませんが、現場でしか感じることができない空気感を体感する機会を持つことは重要です。
各データを見ているだけでも、何かこの施設は退去や入院が多いな、離職率が高いな、介護サービスのキャンセルが多いなどのアラートが上がっている事があります。
不適切ケアが増えれば事故だけでなく、経営的な数値にも影響が出てきます。施設や事業所任せではなく、横断的なチェック機能を設ける事が重要です。

小規模な法人の場合、そういった機能は作れない場合もあります。その場合はやはりトップが信念を持って、管理者と向き合って課題解決の道を探ることが重要です。
気を付けないといけないことは、管理者の属人的な運営に流されないことです。それは最後には施設長や管理者を苦しめる事になります。
あと最近はセンサー等の見守り機能が充実した機器が増えてきました。ナースコールでもいつ誰が呼ばれて、対応した時間の記録が残るものや、プライベート空間での会話や映像があとから確認できる機能がついたもの増えています。
このような機能は本来利用者様の安全の為のものですが、スタッフの管理や法人自体を守るためにも活用できる場面は多々あると思いますので、活用していくことをお勧めします。




