介護施設におけるナースコールは、入居者の生活や身の安全を守るための重要な連絡ツールです。しかしさまざまな理由によってナースコールを押せずに、転倒などの事故や病状の急変などにすぐに気づけずトラブルに発展する可能性があります。今回はナースコールを押せない理由と、それぞれの理由に合わせた対策を解説します。
目次
そもそも、ナースコールを押せない理由とは?
【理由1】身体的に押せない
【理由2】心理的に押せない
ナースコールが押せない場合に起こりうるリスク
身体的な理由でナースコールを押せない場合の対策
身体に障害がある場合
認知症や精神障害がある場合
転倒の可能性がある場合
心理的な理由でナースコールを押せない場合の対策
遠慮や頼ることが苦手な場合
コミュニケーションを取りたくない場合
押すべきかの判断がわからない場合
対策と同時にケアの必要度を把握しておくことが重要
まとめ
■そもそも、ナースコールを押せない理由とは?
介護施設の入居者がナースコールを押せない理由はさまざまですが、大きく「身体的な理由」と「心理的な理由」の2つに分けられます。それぞれ詳しく解説します。
【理由1】身体的に押せない
介護施設では認知症や身体的な障害があるなどの理由から、ナースコールを押せない入居者がいます。
たとえば認知症の方の場合、認知症の症状の一つである中核症状によって物体を認識できないという症状が出てしまい、「ナースコールがどこにあるのかがわからない」ということも起こり得ます。ナースコールとほかのものが判別できずに、リモコンを間違えて押していたという事例も起こっています。
また認知症になると記憶障害を引き起こすこともあり、ナースコールを押すタイミングや押し方を覚えられないケースもあります。ナースコールの使用方法の説明で、「スタッフを呼びたいときにナースコールを押してください」「このボタンを押すとスタッフが来ます」と教わっても、すぐに忘れてしまう可能性もあります。
そのほか身体的な障害を抱えて、体を自由に動かせない方や力が弱まっている方もいます。そのため、「ナースコールを握る」「ボタンを押す」といった物理的な動作ができないというケースもあります。
【理由2】心理的に押せない
身体に問題はなくても、心理的なことが影響してナースコールを押せない入居者もいます。忙しい介護スタッフに遠慮して、ケアに来てもらうことを申し訳ないと感じる入居者も少なくありません。
また「身の回りのことができなくなる苦しさ」や「すぐに物事を忘れてしまう不安」などの感情から、恥ずかしい思いをしたくないという気持ちにだんだん変化する方もいます。結果的に人とのコミュニケーションを積極的にとることを控えるようになり、ナースコールを押せなくなるというケースもあります。
■ナースコールが押せない場合に起こりうるリスク
ナースコールは入居者がケアやサポートを必要としたときに、スタッフに通知するためのツールです。トイレや入浴など日常的なケアのためにスタッフを呼ぶこともありますが、「体調に異変が生じた」「転倒してしまった」など、迅速な対応が必要な呼び出しの場合もあります。しかし何らかの事情でナースコールが押せない状況だと、発見が遅れてしまい命にかかわる危険性もあります。そのためナースコールは設置すればよいものではなく、押しやすい環境にあるかが大切です。
■身体的な理由でナースコールを押せない場合の対策
身体的なことが理由でナースコールを押せない場合は、それぞれのケースに応じて最適なナースコールを設置することが対策につながります。
身体に障害がある場合
身体的な障害は軽度から重度までさまざまです。障害によって入居者ごとにできる動作は異なるため、ナースコールを押せるか押せないかは入居者ごとに判断しなければなりません。たとえば障害が重い方であれば、握力がなくても手で触れたり近づけたりするだけで鳴らせるナースコールが適しています。また指先で押せない方であれば、ひじや足などでも簡単に押せるボタンが大きいナースコールが必要です。
認知症や精神障害がある場合
認知症や精神障害を抱えている入居者の場合、自分自身で判断してナースコールを押すことが困難なケースもあります。そのため客観的に入居者の動きや異変を捉えて、通知できるナースコールが必要です。
たとえば圧力を感知できるセンサーをベッドや床に設置することで、ベッドから起き上がったときなどの動きを検知できるようになります。すぐにスタッフが対応にあたれるため、転倒などの事故を未然に防ぐことが可能です。
また認知症や精神障害を抱える方の場合、徘徊が心配されるケースもあります。センサーを居室や施設の出入り口に設置すれば、徘徊の防止にも役立ちます。
無線ナースコール「ココヘルパ」では、入居者の動きを検知して介護スタッフに知らせる、さまざまなセンサーツールを提供しています。ベッドから起き上がったことを検知できる「ベッドセンサー」や、ベッドから足を下ろしてマットを踏んだことを検知できる「マットセンサー」、ドアに設置して出入りを把握できる「ドア開閉センサー」などがあります。入居者がナースコールを押さなくても、入居者の動きを把握できるので安心です。
転倒の可能性がある場合
介護施設の入居者は、身体的な障害を抱えている場合や高齢者も多いため転倒する可能性も高まります。そのため転倒の可能性がある場所などを事前にチェックして、ナースコールを押しやすい場所に設置することが対策につながります。
たとえばトイレや入浴などのシーンは、転倒するリスクが高い場所です。トイレは夜間に急いでいたり十分に目覚めていなかったりする状態で行くケースもあり、転倒リスクが高まります。また入浴の際も脱衣所や浴室は床が濡れて滑りやすくなっているため、転倒に十分に注意しなければなりません。このような転倒の可能性が高まる場所に、ナースコールを設置しておくことも対策の一つです。
無線ナースコール「ココヘルパ」は居室のナースコールとは別に、トイレにボタンを設置することも可能です。無線式であるため各居室の配線引き込みは不要であり、有線式と比べると簡単に導入できます。また防水設計を施した呼び出しボタン(SW23W)は、浴室や脱衣所などに設置も可能です。さらに万が一居室で転倒などの事故が発生した場合には録画録音機能があるモデルもあるため、「何が原因だったのか」の要因把握と再発防止策にも役立てられます。
- 身体に障害がある場合
- 認知症や精神障害がある場合
- 転倒の可能性がある場合
ナースコールを押せない場合の対策について、3つのケースを紹介しました。
これまでご紹介したもの以外に、映像付ナースコールと多彩なセンサーを一体化したココヘルパ最上位モデル「ココヘルパX」は入居者の起床や離床などの動きや転倒などの身体異常、体表温変化、呼吸数などを自動計測し異常があった場合にアラート通知が可能です。
また非接触で離床を検知できるため、マットセンサーなど足元に物があることで転倒のリスクが高まってしまうというような場合にも役立ちます。ココヘルパXを導入することで入居者の異変にいち早く気づけるようになるため、入居者の日々の経過観察を注意深く行いたい、見守り体制を強化したい場合にもおすすめです。
■心理的な理由でナースコールを押せない場合の対策
身体的な理由であれば最適なナースコール選びや設置の工夫が有効ですが、心理的な理由の場合は、介護スタッフのケアやサポートの工夫が求められます。
遠慮や頼ることが苦手な場合
忙しい介護スタッフに対して申し訳ないという気持ちを抱く方や、他人に頼るのが苦手な方は、ナースコールを押すことに抵抗を感じてしまいます。このようなケースでは、入居者に意識を変えてもらい、安心してナースコールを押せるような環境作りが一番の対策です。
入居者のなかにはスタッフの状況や様子、関係性などを敏感に感じ取る方もいます。普段からこまめな声掛けや表情によって、入居者への関心を持っていることを伝えることが大切です。遠慮や苦手意識が薄まり、ナースコールを押すことへの抵抗感も少なくなるでしょう。
コミュニケーションを取りたくない場合
入居者がコミュニケーションをとりやすいような環境作りを心掛けることも大切です。もともとコミュニケーションが苦手な方や、障害などの理由からうまく会話ができずにコミュニケーションに消極的になっている方もいます。
認知症の方や精神障害などの理由から、会話に集中するのが難しいという方もいるため、会話に集中できるように1対1で話す機会を設けることが効果的です。また相手の話は理解できてもうまく話し出せないということもあるので、急かすようなことはせずに入居者のタイミングに合わせて待ってあげることもコミュニケーションの方法です。入居者が安心してコミュニケーションがとれると感じてくれれば、ナースコールを押しやすくなるはずです。
押すべきかの判断がわからない場合
ナースコールを押すべきタイミングを具体的に説明することが対策につながります。「何かあればナースコールを押してください」という説明だけだと、どのような状況でナースコールを押すべきかわからない方もいます。
そのため「体に異変を感じた場合」「設備の操作などでわからないことがあった場合」などと具体的な内容を例に挙げることがポイントです。また判断に迷ったらナースコールを押してもらうようにお願いしておくことで、ナースコールへの心理的ハードルを下げられます。
口頭での説明だけだと聞き逃したり忘れたりすることもあるので、ナースコールを押す状況の説明書きをベッドサイドに貼り付けておくことも対策の一つです。
■対策と同時にケアの必要度を把握しておくことが重要
ナースコールを押せない方のために対策を講じることは大切ですが、入居者ごとに「ケアの必要度」を把握しておくことも重要です。
「ケアの必要度」を把握するためには、入居者ごとの行動を細かく収集して生活のパターンを知る必要があります。「朝起きたらすぐにトイレに行く」「食事後に入浴する」などのパターンを把握できれば行動予測が立てられるようになり、トイレや入浴、食事などケアが必要となる前に声をかけてあげられます。ケアの必要度を把握しておくことで、「ナースコールを押せない」「躊躇してしまう」といった状況であっても、入居者は安心して過ごせるようになるでしょう。
映像付ナースコールと多彩なセンサーを一体化したココヘルパ最上位モデル「ココヘルパX」はナースコール回数、体表温変化や呼吸数など一日の様子を自動記録しグラフ化するため、日頃から入居者の行動パターンや傾向を把握することが可能です。
■まとめ
認知機能や身体障害などの理由からナースコールが押せないケースや、心理的な理由でナースコールを押すことをためらってしまう方もいます。そのためナースコールは入居者が押しやすいような対策や工夫を施すことが大切です。
無線ナースコール「ココヘルパ」はさまざまなセンサーと接続・連携ができるほか、録画録音機能で事故が起きた際の要因分析が可能です。さらにセンサー一体型のナースコール「ココヘルパX」により状態変化の自動通知や入居者のデータのグラフ化も行えます。ココヘルパは全7シリーズを展開しており入居者の状態に合わせた提案が可能であるため、ナースコール導入をご検討の際はぜひご相談いただければ幸いです。