介護職員の定着率を上げるための方法

介護経営

2025.12.26

 

 

目次


1.定着率とは

2.定着率の計算方法

3.介護業界の離職率と離職理由について

4.定着率を上げる方法(現場編)

5.定着率を上げる方法(法人編)

6.定着率を上げる方法(新技術の導入)

 

 

 

■定着率とは

定着率とは、「従業員が企業にどのくらい定着し、働き続けているか」を表す数値のことです。

定着率が高い企業は、従業員が安心して長く働ける環境が整っているため、離職が少なく、逆に定着率が低い企業は、従業員が何らかの原因で長く働けない状況であることが予測されます。

定着率が低いと、人材採用や人材育成にかかるコストが増加するというデメリットがあります。介護職員採用の困難さと同時に、定着率の向上に頭を悩ませる経営者は多いです。

 

 

■定着率の計算方法

それでは定着率の計算方法はご存知でしょうか?下記の計算方法で算出されます。

現在の従業員者 ÷ 入社時の従業員数 × 100

たとえば、入社時の従業員数が100人で、現在の従業員数が90人という場合の計算式は「90÷100×100=90%」となります。

ただしこの計算方法では、期間中に入社した従業員は計算に含まれません。そのため正確な数値を算出したい場合は、下記の計算式を用います。

(〇年前の入社人数-〇年間の離職人数)÷ 〇年前の入社人数 × 100

 

たとえば、直近3年間の定着率を計算したい場合は、3年前の入社人数が100人で、3年間の離職人数が20人だったとします。この場合の計算式は「(100-20)÷100×100=80%」となります。

新入社員の定着率を測る期間は3年間が、一般的には4月から3月までの期間で計算する場合が多いです。

 

 

■介護業界の離職率と離職理由について

厚生労働省の令和6年度雇用動向調査結果によると、全産業の離職率の平均は14.2%の中で介護業界は12.4%となっており、10年間で4ポイントも下がっているという一般のイメージと違った結果になっています。

これは国の介護職員に対する処遇改善加算や環境改善の効果も大きな影響を与えたと思います。

では、離職理由は何が多いかといいうと、現場から聞こえてくる理由は圧倒的に人間関係が起因となっているものです。次に法人、事業所の理念や運営方針への不満となっています。

介護労働安定センターの令和5年の調査による退職理由の1位は職場の人間関係が33.6%、法人、2位が事業所の運営方針が26.3%、収入面は18.2%で3位でした。

全般的に介護職員は人の役に立ちたい、感謝されたいなどホスピタリティの高い人材が多く、給与も重要ですが自分が理想とする理念や環境を重視する事が多いため、世間一般の介護業界のイメージに引っ張られてしまうと、離職を減らして定着率を上げることを阻害してしまう危険性があります。

 

 

 

■定着率を上げる方法(現場編)

定着率を上げるということは離職を減らす事と一致するので、離職原因を精査して改善していく必要があります。先程述べた通り、退職理由で一番多いのは職場の人間関係です。職場の人間関係については法人本体というよりも各々の現場で対処する必要があります。

介護事業所はまだまだ小規模な事業所が多く狭い職場環境の中では、一度人間関係が悪化するとなかなか改善することが難しいです。

介護業界は求人も多いため他に仕事が見つかりやすいという環境もあり離職が進み易いという側面もあります。よく聞く言葉ですが、やはり風通しの良い職場作りが各事業所の管理者の重要な責務といえます。

離職率の高い職場はコミュニケーション不足と思われる事業所が多いです。職員は上司、先輩社員だけでなく、利用者本人、その家族との人間関係の中で悩むことも多く、不満を言う、相談をする場を求めています。

 

管理者は売上対策や外部事業者との折衝、家族対応など事業所全般の運営に神経と時間を費やすことが多いため、各職員の相談や面談に時間を割くことができていない職場が多いです。

管理者の目が行き届かない環境が、職場内の歪なパワーバランスを生んでしまい、休日設定等のシフト作成が不公平、業務の振り分けが偏っているなどの職員の不満を生み出していることを多く目にします。

 

この環境の改善には、やはり管理者、長たる者と職員とのコミュニケーションの場を設ける必要があると言えます。個別の研修だけでなく、フランクに話せる場を定期的に設ける仕組みを創る事が肝要と考えます。

またただ話を聞くだけではなく、不満や相談に対して時には法人本体と解決策を探るという姿勢を見せることも重要です。ただ話をさせられてだけで何の進展もなければ、より失望と徒労感を感じて離職につながり易くなります。

 

 

■定着率を上げる方法(法人編)

退職理由で二番目に多いのが、法人、事業所の運営方針となっています。

 

運営方針となると幅広くなってしまいますが、やはり多いものとして、売上、利益を追求することで、自分たちがやりたい介護スタイルではなくなったという声をよく聞きます。これについては、職員自身が法人、事業所本体の経営内容を深く理解できていないことも多く、一方的に職員側の意見を尊重することはできませんが、法人として労働環境を改善することは責務といえますので、やはり互いの方向性を合わせていく必要はあります。

 

広い意味で法人、事業所の運営方針に含まれると思う、評価制度と研修教育制度も主な退職理由と言えます。

小規模の事業所が多い介護業界では、まだまだ人事制度が整っていないところも多く、特に評価制度については管理者の好き嫌いで評価や人事が決まってしまうことも多く発生してしまいます。人事評価について現場任せにするのではなく、法人全体としての目線も入れて、不公平感のない制度を構築する事が重要です。

短期間で離職する原因として、教育研修制度の不備も挙げられます。

介護経験者であっても、特養、デイサービス、在宅訪問、有料老人ホームではそれぞれのサービス提供方法も違えば、法人によってスタイルも違うため最初は戸惑うことも多々あります。経験者だから大丈夫、入社時の研修をしなくても仕事に入ってもらうといったことしていると短期間の退職者を生むことになるので入職時の丁寧な対応が必要です。

 

■定着率を上げる方法(新技術の導入)

人材不足で仕事量が増えたことで離職するという事例も無視することができません。
介護という仕事は人しかできないことが多いのは事実ですが、ICT技術、ロボット技術で作業効率を上げて労務負荷を低減することで定着率を上げる効果は期待できます。

 

夜間のコール対応、巡視業務、記録業務などについては、近年技術開発が進んできたセンサーや記録ソフト、アプリなどを活用することで、職場環境の改善を図ることができます。

そのような投資額が大きくなる事に二の足を踏む法人、経営者も多いですが、採用コストの増大傾向を考えると、導入を検討する余地は十分あると思います。

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またこのような設備投資については様々な補助金制度もあるので、詳しい企業に相談される事をお勧めします。

 

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