介護施設における転倒防止対策は、必要不可欠なものとなっています。
高齢になると筋力やバランス感覚の低下などを理由に、若い頃に比べると転倒リスクは高まります。
また高齢者が転倒するとその後の日常生活の動作が低下してしまい、自立した生活を送ることがより難しくなる恐れもあります。
この記事では、転倒事故の要因や起こりやすい場所について解説します。
介護施設の転倒事故の要因は?
-入居者の身体的な要因
-施設の環境的要因
-スタッフの介護サービス要因
介護施設で転倒が起こりやすい場所
■介護施設の転倒事故の要因は?
介護施設で起こる転倒事故の要因は複数ありますが、大きく以下の3つの要因に分けられます。
- 入居者の身体的な要因
- 施設の環境的要因
- スタッフの介護サービス要因
入居者の身体的な要因
加齢による身体機能の低下や運動不足といった、入居者自身が要因となるケースです。
【加齢による身体機能の低下】
加齢に伴って身体機能は、徐々に低下していきます。たとえば視力が低下したり視野が狭まったりすると周囲のものが見えづらくなり、物につまずいたりぶつけたりしやすくなります。また平衡感覚が低下してバランスを崩しやすく、柔軟性や瞬発力も衰えていくため咄嗟の反応もできなくなります。
【運動不足による運動機能・感覚機能の低下】
運動不足になると、運動機能や感覚機能が低下します。筋力が弱まったり関節の動きが鈍くなったりと、身体機能を低下させる原因となります。身体機能の低下によって外出することや身体を動かすことが減り、さらに加齢を加速させるという悪循環を招いてしまいます。
【認知症による判断能力の低下】
認知症になると判断能力や注意力は低下し、何かを探し回って物にぶつかったり、段差に気づかずつまずいたりすることがあります。
【病気の影響】
高齢になると持病を抱えている方も少なくありません。パーキンソン病や脳卒中など、脳の病気が影響して転倒しやすくなることもあります。まためまいや意識障害をともなう病気が要因となって転倒するケースもあります。
【薬の副作用によるめまいやふらつき】
抗うつ薬や睡眠薬などの服用している薬の影響で、めまいやふらつき、眠気、活動力の低下が起き、転倒リスクを高めます。
施設の環境的要因
滑りやすい床や段差、手すりがないなどの、介護施設の設備や環境によって、転倒事故を引き起こすことがあります。
【浴室などの滑りやすい床】
浴室などの滑りやすい床や、床に水をこぼしたままなっているなどの状況は、転倒の要因となりやすいです。
【段差や敷居】
高齢者は歩幅がせまくすり足歩行になりやすいため、段差や敷居は転倒してしまう要因です。
【障害物】
電気コードやカーペットなどに足をひっかける、足下に置かれた物にぶつけるなども転倒の要因です。
【手すりを設置していない】
廊下や階段、トイレ、浴室など、移動や立ち座りをする場所は転倒しやすい場所です。手すりが適切に設置されていなければ、転倒リスクを高めてしまいます。
【履物】
スリッパや靴下などの履物が滑りやすかったり、サイズが合っていなかったりすると転倒リスクを高めます。
【不適切な照明】
高齢に伴って、視力が低下し視界が悪くなりやすいです。不適切な照明の管理が、転倒事故の要因となることもあります。
スタッフの介護サービス要因
人手不足や人員配置、不適切な介護などの介護サービスが要因となって、転倒事故を起こすこともあります。
【人員不足により見守りが行き届かない】
介護業界は、人手不足が慢性的な問題となっています。人手が十分に足りないと、訪室が遅くなってしまったり注意が行き届かなかったりして十分な介助が行えず、入居者が一人で行動してしまい、転倒するというリスクにつながります。
【ストレスや疲れによる判断力の低下】
人手不足によって、スタッフ一人ひとりの業務負担は増加し、残業や夜勤などで長時間労働につながりやすいという問題があります。スタッフがストレスや疲れを溜めてしまい、判断力が低下して転倒させてしまう恐れもあります。
【不適切な介護によるもの】
移動や立ち座りなどの動作時に誤った支え方をしてしまったなど、不適切な介護によって転倒事故を起こす恐れもあります。
■介護施設で転倒が起こりやすい場所
介護施設で転倒が起こりやすい場所を大きく分けると、以下の4つです。
- 段差のある場所
- 片付いていない場所
- 滑りやすい場所
- 暗い場所
それぞれ具体的な場所を見てみましょう。
【段差のある場所】
階段や玄関、ベランダなどの段差がある場所は転倒しやすい場所です。室内なら敷居、屋外なら点字ブロックなどの少しの段差にも注意が必要です。
- 階段
- 玄関
- ベランダ
- 敷居
- 点字ブロック
【片付いていない場所】
片付いていない場所は、転倒が起こりやすいです。とくに動線上やベッド周りなどの足下に、物が置かれていると危険なのはもちろん、歩行や立ち座りする周囲のスペースが確保されていないと身体をぶつけてしまう恐れがあります。また電気コードがむき出しになっている、カーペットの端がめくれているなどの些細な物も障害となりなす。
- 動線上に物が置かれている
- スペースが確保されていない
- 電気コードがむき出しになっている
- カーペットやマットが敷かれている
【滑りやすい場所】
水で濡れた床や油で汚れた床は滑りやすく、転倒しやすい場所です。浴室やキッチン、雨にあたる玄関先などのスペースは気をつけましょう。室内であればタイルなどの床、屋外だとマンホール上は、濡れることでとくに滑りやすくなるため注意が必要です。
- 浴室
- キッチン
- 玄関
- タイルや堅い木材を使った床
- マンホール上
【暗い場所】
夜間など暗くなる時間帯は注意が必要です。日中でも照明が不十分で暗くなってしまうような場所にも気をつけましょう。足元が見えにくく物につまずいたりぶつけたりする可能性があり、転倒が起こりやすいです。
ではこのような転倒事故を起こさないためには、どのように対策をすれば良いのでしょうか。次回の記事にて詳しく解説していきます。