介護サービスの提供は、入居者のプライベートに踏み込むことや個人情報を扱うことが多々あります。気づかないうちに入居者のプライバシーを侵害してしまい、入居者やその家族を不快にさせてしまうリスクがあるため注意が必要です。
この記事では、介護における具体的なプライバシー情報の例や、プライバシー保護が必要となる場面などについて解説します。プライバシー保護に配慮した介護サービスの機器についても紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
介護におけるプライバシーとは?
具体的なプライバシー情報の例
介護施設におけるプライバシー問題
介護施設でプライバシー保護が必要な場面
個室での生活
入浴介助
排泄介助
入居者の個人情報
入居者との会話
スタッフ同士の会話
SNSや掲示物
介護記録
介護施設でプライバシー保護を徹底するためには
相手の立場に立って行動する
プライバシー保護をしながら見守りができる機器を導入する
ココヘルパなら見守りつつプライバシー保護が叶う!
まとめ
■介護におけるプライバシーとは?
プライバシーとは、一般的に「個人や家庭内の私生活、他人に知られたくない情報」のことであり、これらの情報が「他者から干渉や侵害を受けない権利」という意味で使われています。
とくに介護施設では、名前などの個人情報をはじめ、疾病・障がいに関する情報なども多く取り扱います。これらの情報は他人には知られたくない情報、つまりプライバシーに該当します。また介護サービスでは、排泄や入浴など、入居者のプライベートな領域に踏み込んだ介助も必要です。排泄に関する情報や肌を露出する状況など、入居者の尊厳に関わることもプライバシーに該当し、配慮するべき重要なポイントとなります。
また「プライバシー=個人情報」とよく混同されますが、厳密にいうと両者には違いがあります。
【個人情報とは】
- 本人の氏名や生年月日、住所、顔写真などの「個人を特定できる情報」
- マイナンバーや基礎年金番号などの「個人識別符号が含まれる情報」
そして個人情報に加えて、干渉されたくない、侵害されたくないと感じる情報を合わせたものがプライバシー情報といえます。
プライバシー情報 | 他人に知られたくない情報(個人情報も含まれる)
入居者の尊厳に関わること |
個人情報 | 個人を特定・識別できる情報 |
入居者情報はもちろん、介護施設で取り扱うことの多い、ケアプランや介護記録などもプライバシー情報に該当します。そのため介護施設では、個人情報だけでなく、入居者の尊厳に関わるさまざま情報も適切に保護しなければなりません。
■具体的なプライバシー情報の例
それではプライバシー情報はどのようなものが該当するのか、具体的な例を見てみましょう。
【その情報だけで特定の個人を識別できる情報】
▸氏名
▸顔写真
【他の情報と照合することで個人を識別できる情報】
▸生年月日
▸住所
▸電話番号
【個人識別符号が含まれる情報】
▸マイナンバー
▸基礎年金番号
▸介護保険被保険者番号
【個人や家庭における情報】
▸疾病・障がいに関する情報
▸年金・貯蓄に関する情報
▸生活歴
▸ケアプラン
▸介護記録
▸リハビリ評価表
【介護サービスに関する内容】
▸入浴・排せつ・更衣・おむつ交換などに関する内容
介護施設では入居者の個人情報に加え、健康状態や病歴、経済状況などのセンシティブな情報も取り扱います。これらの情報は入居者だけでなく、その家族の情報も含まれています。
またプライバシー情報の中には、肌の露出や排せつなど、他人に踏み込まれたくない領域も存在します。
■介護施設におけるプライバシー問題
介護施設では、施設側の配慮のない言動によって、入居者がプライバシーを侵害されたと感じる恐れがあります。
入居者は何らかの疾病・障がいによって、体を自由に動かせなかったり、自身で判断するのが困難だったりと、一人一人の状況は異なります。そのため介護スタッフは入居者それぞれの身体や精神に関する情報などを深く理解し、介護サービスを提供しなければなりません。そして入居者が自分で思うように意思表示や行動できないことを踏まえ、安全に暮らせるように見守り体制をしっかりと整えておく必要もあります。しかし入居者の把握や管理をすることは、「行動を監視されている」「プライバシーがない」と感じる恐れもあり、安心して生活できないという問題にもつながりやすいのです。介護現場では「見守り」と「プライバシー」のどちらを重視するか、といった点が課題となることがあり、とくに入居者の尊厳に関わるケアについては、より一層の配慮が求められます。
よりよい介護を提供するためにも、入居者やその家族の信頼を損ねないように、相手の立場に立ってプライバシー保護に取り組むことが重要です。日常生活の手助けが必要となり、見守りによる行動把握の必要性が高まったとしても、入居者の尊厳を守ることを意識しなければなりません。
■介護施設でプライバシー保護が必要な場面
介護施設においてプライバシー保護が必要となる場面と、それぞれの場面でどのような配慮が求められるかについて紹介します。
個室での生活
入居者一人ひとりが生活する、個室スペースのプライバシー配慮は欠かせません。あらゆるリスクに備えて対応できるように、見守りカメラやセンサーなどを設置するケースがあるからです。
入居者の中には疾病・障がいなどの理由から、自身でナースコールを押せない方もいますし、体調が急変してナースコールを押せない可能性も考えられます。またベッドからの転落や転倒、認知症の方の徘徊など、ケガや事故につながる要素も防いでいかなければなりません。
【プライバシー保護に関するポイント】
見守りカメラは、単に監視カメラとは異なります。プライバシー保護の観点から、以下のような機能を備えているとよいでしょう。
入居者本人やご家族にも、機能や使い方の説明を行っておくと安心してもらえるでしょう。
>>>関連記事 介護施設における見守りとは?ポイント5つを解説!
入浴介助
プライバシー保護が必要な場面として挙げられるのが、入浴介助です。入浴時は、入居者が肌を露出し、プライベートな部分にも触れることが多いため入居者への配慮が欠かせません。ドアやカーテンを開けっぱなしにしたり、服をほとんど脱いだ状態で放置したりすることは厳禁です。
【プライバシー保護に関するポイント】
- 介助のタイミングで必ず声掛けする
- 介助者以外のスタッフは浴室に入らない
- ドアやカーテンは必ず閉める
- 自身で洗える部分は本人に任せる
- 不要な露出は避け、タオルをかけるようにする
- 入居者の身体の様子などを不必要に発言しない
他人に身体を見られたり洗身されたりすることを、恥ずかしく思う方もいることに注意して、尊厳を傷つけることのないように配慮しましょう。
排泄介助
排泄に関しても極めてプライベートな領域であるため、細心の注意が必要です。恥ずかしいという感情に加えて不快感も抱いていることを前提に、ケアに当たらなければなりません。
【プライバシー保護に関するポイント】
- 排泄介助のタイミングで必ず声掛けする
- トイレに入るときはノックする
- 個室ならドアを閉める、相部屋ならカーテンを閉める
- 排泄の状況や排泄物の情報を、周りに聞こえる声でやり取りしない
- 着衣のサポートはトイレ内で行う
要介護度が高い方や意思疎通が難しい方であっても、当然のことながら恥ずかしいという感情は抱いています。他の人から見られないようにし、排泄に関する内容を他の人に聞こえるように話さないなどの配慮が必要です。
入居者の個人情報
介護施設では、入居者の個人情報を多く取り扱います。またスタッフだけでなく、介護施設の関係者とも情報を共有する機会は多々あります。
入居者の個人情報が漏洩するとプライバシーの侵害にあたり、詐欺や悪徳商法に利用されるといったリスクも生じるほか、法的責任を問われる可能性もあります。
【プライバシー保護に関するポイント】
個人情報の漏洩を防止するためには、漏洩することでのリスクを学び、スタッフ全員の意識を統一させることがとても重要です。
入居者との会話
入居者とスタッフ間との会話においても、プライバシー保護について意識しておきましょう。たとえば特定の入居者について、他の方と会話する機会があったとしても、情報を漏らさないことが大切です。
【プライバシー保護に関するポイント】
ついつい入居者の情報を漏らしてしまったということがないように、普段からプライバシーに関する情報の取り扱いに注意しておくことが大切です。
スタッフ同士の会話
入居者情報をスタッフ間で共有する際も、プライバシー保護への配慮が求められます。申し送りのときや健康状態を共有する際など、スタッフ間で入居者について会話する機会はよくあります。しかし共有する内容の中には、本人が知られたくない情報が含まれているかもしれません。
そのためスタッフ同士の会話は、入居者へ配慮することが求められます。また事業所の外に出てからも、入居者情報を口外しないように注意が必要です。
【プライバシー保護に関するポイント】
- 入居者に関する情報共有は、詰所などの人目がないところで話す
- 介護記録などを使って情報を共有する
- 専門用語を使う
- 声の大きさに注意する
本人の名前を出さないようにしたり専門用語を使ったりして、万が一第三者に聞かれたとしても誰のことかわからないようにすることで、プライバシー保護につながります。スタッフの不注意によって、入居者のプライバシーを侵害してしまうことは避けましょう。
SNSや掲示物
SNSや掲示物に入居者の写真を掲載するときも、プライバシー保護が必要です。本人を特定できる顔写真は個人情報に含まれるため、写真を使用する際はあらかじめ本人の了承を得なくてはなりません。
【プライバシー保護に関するポイント】
- 写真を使用する際は本人から了承を得る
- 了承を得ていない場合は、顔をぼかすなどして個人を特定できないようにする
- 写真に写らないように配慮する
- 本人への意思確認が難しい場合、ご家族に了承を得る
施設の掲示物や広報誌に、日常やイベントなどを掲載する機会もあるでしょう。また最近では、SNSに投稿して情報発信する施設も増えています。これらに入居者の写真を使用する際は、プライバシーに配慮した使用が求められます。
介護記録
介護記録には、入居者の個人情報に加え、健康状態や趣味嗜好などのプライバシーにあたる情報が記載されています。日常的に扱う情報であることから、管理がおろそかになってしまう可能性もあります。
第三者も閲覧できるような管理方法だと、プライバシーの問題につながる恐れがあります。とくに最近では、スマートフォンから介護記録をつける施設も増えています。スマートフォンを作業場に放置して誰かに見られる可能性や、外部で紛失・盗難に遭うリスクもあります。
【プライバシー保護に関するポイント】
- 介護記録の保管場所はスタッフのみに周知する
- 介護記録をつけた後は元に戻す
- パソコンで管理する場合はパスワードを設定する
- スマートフォンにロックをかける
介護記録は個人情報をはじめ、プライバシーに関する情報を記載しているため、適切な管理・運用を行うことが大切です。
■介護施設でプライバシー保護を徹底するためには
介護施設でプライバシー保護につなげるために、有効な方法を2つ紹介します。
①相手の立場に立って行動する
入居者のプライバシーを保護するためには、相手の立場になって行動することが大切です。たとえば、排泄介助のときにトイレのドアを開けたまま介助されたり、入浴介助のときに服を脱いだまま放置されたりすると、「自分だったらどう感じるだろう」と考えてみましょう。
プライバシーの範囲は個人それぞれで異なるため、入居者すべてのニーズを満たすことは難しいものです。しかし入居者の立場になって対応を見直していけば、プライバシーに配慮したケアにつながるはずです。
②プライバシー保護をしながら見守りができる機器を導入する
介護施設では、見守りを重視することでプライバシーへの配慮が欠けるという問題を抱えていました。しかし近年では、プライバシーを保護しつつ、見守りにもつながる機器が登場しています。このように、プライバシー保護と見守り強化のどちらもカバーできる機器を導入することが、有効な方法となるでしょう。
■ココヘルパなら見守りつつプライバシー保護が叶う!
「プライバシー保護」と「見守り強化」、双方が叶えられる機器としておすすめなのが、介護施設専用のナースコールシステム「ココヘルパ」です。ココへルパは、呼出機能のみのシンプルなモデルから最先端のモデルまで、さまざまなラインナップを揃えています。
見守りを強化したいなら「ココヘルパX」「ココへルパVP」がおすすめです。録画機能のほか、以下のような機能が備わっているため見守りケアの強化が行えます。
- ココヘルパX
ココヘルパXは、多彩なセンサーで入居者の状態変化を検知するため、訪室しなくてもリアルタイムで呼吸状態や座位・臥床状態・睡眠状態などの情報を把握できます。また体表温を計測しグラフ化するため、急激な体調変化なども捉えやすく、見守りを強化できるナースコールシステムです。
- ココへルパVP
ココへルパVPは、タブレットから居室内の見守りができます。独自の映像型活動検知アルゴリズムにより、入居者の夜間の動きを自動で検知し、活動量が増えるとタブレット上でわかる仕組みです。またタブレットからワンタッチで様子を確認できるため、夜間巡回のときに居室ドアの開閉や照明をつけることなく、さりげなく見守りができます。
またココへルパは見守り機能が充実しているだけでなく、プライバシーにも配慮しています。一部の居室だけカメラオフすることや、個別にモザイク処理ができるため、状況に応じたカスタマイズが可能です。プライバシーが気になる方がいたり、カメラの設置に同意いただけなかったりしても、安心して導入できます。
■まとめ
介護施設では、入居者のプライベートな領域に入り込み身体に触れるという機会が多く、プライバシーに深く介入することが前提のサービスです。
スタッフのプライバシー問題に対する認識にずれがあると、入居者や家族のプライバシーを侵害してしまう恐れもあります。そのため、プライバシー保護への取り組みについて研修を行うことや、相手の立場に立って行動することが大切です。プライバシーにも配慮し見守りを強化していくためには、どちらも実現できる機器を導入しましょう。ココヘルパであれば、見守りを強化しつつ、プライバシーに配慮したカスタマイズもできるためおすすめです。