無線ナースコールで「一挙両得」

コラム

2020.12.22

サービスの質向上と業務効率化

介護施設向けのナースコール設備は当初、病院のナースコールを転用したシステムが主流でした。しかし、2000年の介護保険制度の導入やサービス付き高齢者向け住宅の推進など、介護市場の拡大とともに「介護現場に適したナースコールってなんでないの?」と至極当然の疑問を抱く介護事業者が増えました。

その求めに応じるように介護施設専用のナースコールシステムが開発されるようになったのは、今から10年ほど前になります。今では、要介護度に応じて必要な機能を簡単に追加できるナースコールや、話すことができない入居者や身体を動かすことが難しい入居者でも簡単に呼出ができる機能を付加したナースコール、離床や体動の異常を感知できる見守りシステム(マットセンサー、ベッドセンサー、センサー内蔵ベッドなど)との連携を可能とするナースコールなどが開発され、多くの介護現場で活用されています。

その背景にあるのが、介護の担い手不足の解消であり、介護現場の生産性の向上です。介護サービスの質向上を図りつつ、介護現場で負担となっている業務の負担軽減を目指そうという、まさに一挙両得の動きです。本来の業務である「ケア」に専念できる職場環境づくりは、これからの介護施設で必須の条件となりつつあるようです。

オンライン面会に必要な「無線」

この一挙両得の動きに拍車をかけているのが「地域医療介護総合確保基金の ICT 導入支援事業」などです。コロナ禍によるオンライン面会の推進も加味され、令和2年度補正予算において、①事業所規模に応じた補助上限額の引き上げ、②補助対象にWi-Fi 購入・設置費(通信費は除く)追加といった拡充がされました。そのため、既存施設のナースコール入れ替えにおいても、これまでの有線式ナースコールではなく、無線ナースコールを希望する介護施設が増えています。ナースコール、介護記録、見守りシステムといった、さまざまなシステムを無線でつなげ、自由自在に情報を共有することができる施設内環境づくりが始まっています。

では、有線式ナースコールに比べて、無線式ナースコールがもたらすメリットとは何でしょうか?老朽化に伴うナースコール設備入れ替えで、有線式から無線式にした介護施設に聞いたところ、「配線工事が必要最低限で済むため短工期・低コストで済む」「配線が不要なため、呼出ボタンやセンサーの設置場所に制約がなく、入居者の要望に応じた自由なレイアウトが可能」「要介護度に応じてセンサー類の増設・移設が簡単にできる」いった声が多くありました。

配線工事の入れ替えだけで2000万円?

介護保険制度の導入から20年が経ち、空調やナースコールなど、設備の老朽化に頭を悩ます介護施設が増えています。そんな中、最近、こんな話を聞くことが多くなりました。岐阜県にある特別養護老人ホームの話を例に挙げると、ナースコール設備ではなく配線工事の入れ替えだけで「2000万円かかる」と言われたそうです。予想外の金額に驚き、説明を求めたところ「配線にはアナログ配線とデジタル配線があり、最新の有線式ナースコールを導入するためにはデジタル配線に総入れ替えする必要」と、ある意味、納得せざるを得ない理由だったそうです。ただ、その話を聞いて痛切に思ったそうです。「日々技術が革新されている今の時代、いつでも最新設備にアップグレードできるシステムを導入するべきだ」と。

確かに、ひと昔前は当たり前だった「有線」ですが、無線技術の発達により、企業などのビジネスシーンにおいても、ホテルや旅館、といったレジャーシーンや一般家庭においても「有線」はあまり見かけなくなっています。やはり、有線という「配線」に縛られることない、無線の「便利さ」が世に受け入れられているからです。

スマホ1台に情報を集約

介護は本来、誇りを持てる仕事です。しかし、慢性的な人材不足などにより、「スタッフの業務負担は増し、『ケア』が単なる『作業』になってしまう」といった悩みを抱える介護施設は多いはずです。そのような介護施設では、さまざまな取り組みが行われています。

ある施設では、記録の作成から入居者の状態把握まで行えるようにすることで、スタッフが少なくなる夜間帯でも安心して働ける職場環境づくりを目指し、ケア情報を1台のスマートフォンに集約。スタッフ同士がその情報を共有できるようにしています。また、ある施設では、ベッドセンサーやマッドセンサーとの組み合わせにより、起床や離床動作の前後の映像を保存。万が一、ヒヤリ・ハットが発生した場合、後で映像確認を行うことができるようにしています。ヒヤリ・ハットの再発防止策を講じるとともに、そのデータを用いて、職員研修などに役立てています。

技術革新のサイクルが早まる中、センサー類や映像カメラ、睡眠モニタリング、AIなどのIT技術を駆使し、現場スタッフの経験値に頼るのではなく、入居者の生活習慣をデータ化して把握・分析することにより、入居者からの呼出前に、スタッフがそのニーズを汲み取り対応できる、そんなナースコールが登場する日がすぐそこまで来ているのかもしれません。

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